人類は点をつなぎ続けてきた
Steve Jobsがその有名なスピーチを行ったのは、2005年、Stanford Universityの卒業式だ。
“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.”
「先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ったときにしか、点と点はつなげられないんだ。だから、いつかどうにかして点はつながると信じなければならない。」
大学中退後に興味本位で学んだカリグラフィーの知識が、10年後、Mac開発時に蘇り、世界で初めて美しいフォントを備えたコンピュータへとつながった。一見無意味に思えた過去の点が、10年の時を経て、デザインという線になった。
これは名言中の名言だと思っている。人類はこうした積み重ねによって、知識だけではなく文明そのものを築いてきたから。
ユダヤの格言に、こんな考え方がある。
どれだけ頭にKnowledge(知識)があっても、それを認め、受け入れ、行動に移すAcknowledge(知識の運用)がなければ意味がない。
自分の中に散らばっている情報や知識という点を、自分で動いてつなぎ、線にしていく。現実の課題や目の前の人間関係、社会のニーズとぶつけることで、初めて意味を持ち始める。
点と点が結びつくと、まず「大きな点」=発見が生まれる。
Isaac Newtonは万有引力の法則を、Albert Einsteinは相対性理論を発見した。
しかし発見だけでは線にならない。万有引力は宇宙開発へ、相対性理論はGPSや核エネルギーへと応用されて、初めて線になった。
Alexander Flemingがアオカビと病原菌の関係に気づいたのが大きな点。しかしその発見だけでは線にならなかった。後にFloreyとChainが抗生物質として精製・実用化して、初めてペニシリンは世界中の命を救う線になった。
点と点が大きな点になり、それが世界と交わることで、正式な発明や革新という線が引かれる。
少し脱線するが、高校時代の友人は、すべての物事は一つだと言った。何が何だかわからなかったけど、妙に惹き込まれた。
後から知ったけど、ガイア思想(Gaia hypothesis)という考え方があるらしい。地球全体を、一つの生命体のように捉える思想だ。友人の言葉は、たぶんそういう感覚だったのだと思う。夜行バスに乗りながら長い間話し込んだ。外は真っ暗で何も見えなかったが、脇道の白い線をひたすら見ながら聞いていたのを覚えている。
当時は実感がなかったけど、その言葉だけはずっと自分の中に残り、今でもふとした瞬間に浮かんでくる。そして、実はこの考えは、人が想像するよりもっと奥深いのかもしれない。
情報は今、私たちの周りに無限に広がっているが、あえて興味のない分野にも触れていかなければ、思考は少しずつ偏っていく。冒険の途中で財宝を見つける時は、たぶん寄り道をしている人だ。聡明な人ほど、まったく違うジャンルの本を読んでいることが多いのも、そのためかもしれないけど。
そしてわたしも含めて、インプットの多さを気に病む必要は、それほどないのかもしれない。
大切なのは、集めた点を自分なりにつなげようとすることで、それがすぐにお金にならなくても、発明にならなくても、誰にも理解されなくても、点が大きくなり、線は少しずつ増えていく。
点や線が増えれば増えるほど、人は新しい視点を持てるようになり、複利となって返ってくる。
場所を変えてみたり、知らない街を歩いたり、誰かに話してみる。異分野の人が集まる場所に顔を出すのもいい。手を動かして、なんでもとりあえずやってみたら良い。
そして、書くこと。
書く行為そのものが、点をつなぐ作業でもあり、頭の中に散らばっていた知識とか経験とかを言葉にしようとした瞬間、整理され、思いがけないつながりを見せる。
読み続けることも、考え続けることも、決して無駄にはならない。今はまだ形になっていなくても、点は確実に蓄積している。
だから、スティーブに騙されたと思って、点と点はいつか線になることを信じましょう。
いつもありがとうございます。
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いちいち点を打つのに、意味があるのか?とか、役に立つのか?などと考え、コスパだとかタイパなんかを優先して、点を打つことに躊躇しがちな昨今ですが(私がそうでした)、まずは失敗でも下手でも点を打つのを躊躇わないことが大切だよなぁと、改めて思えました。
ありがとうございました。
突き動かされるようにあちこちに打ってきた点を、今まさに回収しながら生きている感覚があります。因果応報という言葉の意味をしみじみと噛み締めています。